なお、初等教育は日本の小学校、中等教育とは初等教育と高等教育(大学・大学院)の間に位置する中学校、高等学校にあたります。, 図2 世界の女性の無報酬労働時間 出典9:国立教育政策研究所「教育における男女間格差の解消――日本の経験」(2014)p140 マララ基金の活動を通じて出会った少女たちも一緒にいます。彼女たちも今では、姉妹のようです。16歳の勇気あるメゾンはシリア出身で、今はヨルダンの難民キャンプで暮らし、テントからテントへと回って少年少女に勉強を教えています。 国際連合広報センター「国連ミレニアム開発目標報告」(2015) 2014年12月10日に行われたノーベル平和賞の授賞式で、史上最年少受賞者となったマララ・ユスフザイ氏が受賞スピーチを行いました。少女たちの教育の権利を訴え続けてきたマララ氏は、すべての人が平等な教育を受けられる平和な世の中のため、改めて聴衆にはたらきかけました。, マララ・ユスフザイ氏:もっとも慈悲深く、恵み深い神の名において。両陛下、殿下、ノルウェー・ノーベル賞委員会の名だたるみなさま、親愛なる姉妹兄弟たち。今日は私にとってとてつもなく喜ばしい日です。こんなすばらしい賞を頂けるとは、胸が詰まる思いです。, 私を支持し続け、愛してくださったみなさまに感謝します。世界中からのたくさんの手紙やカードを送ってくださり、今もなお送ってくださっていることに感謝します。温かい励ましの言葉に力づけられ、そして勇気づけられています。, 両親の揺るぎない愛に感謝します。自由の羽をもがず、羽ばたかせてくれた父に感謝します。, 忍耐強くあること、そしていつでも真実を語ることを学ばせてくれた母に感謝します。それこそが、私たちが強く信じているイスラムの真の教えです。自分を信じること、そして勇敢であることに気付かせてくれたすばらしい先生方にも感謝いたします。, この賞をいただく、最初のパシュトゥン人であり、最初のパキスタン人であり、そして最年少であるということを誇りに思います。, それと共に、それと同時に、弟たちといまだにケンカをしているようなノーベル平和賞受賞者も私が初めてでしょう。, 平和で満ちあふれる世界を願っていますが、私と弟にとってはなかなか険しい道のりです。, 子供の権利活動家の第一人者であるカイラーシュ・サティヤールティーさん、実に私が生きてきた2倍もの年月を活動されて来た方と共にこの賞を受賞したことはとても名誉に思っています。私たち、インド人とパキスタン人が手を携え、子供の権利のために戦うが共に活動できることを誇りに思います。, 親愛なる兄弟たち、姉妹たち、私の名前はパシュトゥン人のジャンヌダルク、マイワンドのマラライにちなんで名付けられました。マララという言葉には、打ちひしがれた嘆きや悲しみという意味があります。しかし、私の祖父はその名前に幸福という意味を付け加えてくれて、私をこう呼んでくれています。世界一幸せな少女、マララ、と。, 私は今日、この日、解決すべき問題にみんなで共に立ち向かうことができるのは、とても幸せです。, この賞は私だけに与えられたものではありません。教育を求めながらも、忘れ去られている子供たちのためのものです。平和を求めながら、恐怖の中に立っている子供たちのためのものです。変化を求めながら、声を上げられない子供たちのためのものです。, 私は子供たちの権利のためにここに立っています。子供たちの声を上げるために。子供たちを哀れむ時ではありません。哀れむ時ではないのです。これで最後にするのです。これで最後になるように、行動を起こすのです。行動を起こせば、教育の機会に恵まれない子供をこれ以上見ることはないのですから。, 人々は私をさまざまな呼び方で呼びます。タリバーンに撃たれた少女と呼ぶ人もいます。自分の権利のために戦う少女だと呼ぶ人もいます。今では、ノーベル賞受賞者、と呼ぶ人もいるでしょう。弟たちはいまだに偉そうでうるさい姉ちゃん、と呼んでいますが。, 私からすれば、私は、すべての子供が平等に教育を受けられる姿が見たい、女性が平等の権利を受けれる姿が見たい、隅々まで平和な世界が見たいと願う、ただの熱心な、頑固ですらある、1人の人間です。, 教育は人生の恩恵です。人生に必要なものです。私はそれを17年間の人生で身をもって知っています。私は、愛する故郷、スワートで、学び、新しい発見することが大好きでした。特別な時には友人と、花や模様を描く変わりに、数式や方程式をヘナで腕に装飾したものです。, 私たちは、教育に飢えていたのです。未来は教室のなかにこそあったのですから。私と友人は、共に座り、学び、読んだものです。きっちりした制服を着て、目の奥に大きな夢を携えるのが大好きでした。私たちは両親に誇らしく思われたかったのです。そして、優秀な成績を取ったり、成果を残したり、という、男子にしかできないと一部の人に思われていることだって、十分できるのだということを証明したかったのです。, しかし、日々は一変しました。美しい観光地であったスワートは突如、テロリズムの舞台となったのです。400以上もの学校が破壊されたのは、私がたった10歳の時でした。女性たちは鞭で打たれ、人々は殺されたのです。私たちが抱いていた美しい夢は、悪夢へと変わったのです。, 教育は権利ではなく、犯罪となりました。少女たちは学校へ行かなくなりました。私の世界が突如として変わってしまった時、わたしのなかでなにを優先すべきか、ということも変わりました。私には2つの選択肢がありました。沈黙を守り、殺されるのを待つか、声を上げて殺されるか、です。私は声を上げる方を選びました。, 無慈悲な殺戮とイスラムの名を汚す行為、私たちの権利を否定するテロリストの権利侵害を、ただ黙って見ていることは私たちにはできませんでした。, 私たちは声を上げ、彼らに語りかけたのです。聖典コーランでアラーの神がおっしゃったことがわからないのか、と。人1人殺めることは人類すべてを殺めるに値する、という教えを。ムハンマド、平和を共にする慈悲深い予言者が、自分も人も傷つけていはいけないと説いているのを知らないのですか、と。そして、コーランの最初にある、「読め」という意味の「イラク」という言葉を知らないのですか、と。, 2012年に、テロリストはここにいる私の友人と私を制止する為にスクールバスを襲いました。しかし、彼らの思想や銃弾は勝利しませんでした。私たちは生き延びたのですから。その日から私たちの叫びはさらに大きくなっていったのです。, 私が自分の話をするのは、珍しい話だからではありません。たくさんの少女たちが抱えているのと同じ話だからです。, 今日、私はここにパキスタンから、ナイジェリアから、シリアから“姉妹”を連れて来ました。今日お話した話は彼女たちの話でもあるのです。勇敢なる姉妹、シャジアとカイナートはあの日、スクールバスでテロリストに撃たれましたが、学ぶことは止めませんでした。勇敢なるカイナート・スームロは深刻な虐待と暴力を受け、兄弟を殺されながらも、テロリストに屈服しませんでした。, マララ基金活動を通じて知り合った姉妹もここに来ています。シリアの勇敢な姉妹である、メゾンは難民としてヨルダンで暮らし、難民キャンプを行き来し、少年少女に学ぶことのすばらしさを教えています。ナイジェリア北部出身のアミナはボコ・ハラムの脅威にさらされています。少女は学校へ行きたいと望んだだけで、脅され、付きまとわれ、誘拐すらされるのです。, 私は一少女としてここに立っています。一少女として、です。5フィート2インチ(約158センチ)の1人の人間として、ハイヒール込みでいいとおっしゃってくださるなら、ですが(笑)。ハイヒールなしではたった5フィート(152センチ)なので。, 私の声は私だけの思いではありません。私は1人で声を上げているのではありません。私は1人ではありません。私はマララですが、シャジアでもあります。私はカイナートです。私はカイナート・スームロ。私は、スームロ。私は、メゾン。私は、アミナ。私は教育に恵まれない、6,600万の少女たちです。そして今日、私は自分自身の声を上げているのではありません。6,600万の少女たちの声を上げているのです。, 私に、なぜ少女たちが学校へ行く必要があるのか、と聞く人がいます。なぜ学校へ行くことがそんなに重要なことなのか、と。私にとっては、なぜ彼女たちが学校へ行かなくていいのか、ということのほうが重要なことです。学校へ行く権利がないのか、と言うことのほうが。, 親愛なる兄弟姉妹たち。この世界の半分はめまぐるしい発展と発達を遂げています。しかし、何百万もの人々が戦争や貧困や権利侵害に苦しむ国が、まだまだたくさんあるのです。, 争いのなかで罪のない人々が命を落とし、子供たちが孤児になっているのを目にします。シリアやガザ、イラクではたくさんの人々が難民になっています。アフガニスタンでは自爆テロと爆撃により多くの家族が命を失っています。, アフリカの子供たちの多くは、貧しさの故に教育にまで手が回りません。ナイジェリアの少女たちは学校に行く自由がありません。, カイラーシュ・サティヤールティーさんがおっしゃったように、多くのパキスタンやインドのような国の子供たちは、社会的に禁じられている、もしくは児童婚や児童労働を強いられているため、教育の権利が奪われているのです。, 大胆で、自信に満ち、医者になることを夢見た私と同じ歳の学友が居ました。しかし、彼女の夢は夢と散ったのです。12歳の年に、彼女は結婚させられたからです。彼女はすぐに子供を身ごもったのですが、その時彼女はまだたった14歳の子供だったのです。彼女はいい医者になれたはずです。でも、なれなかった。彼女が女の子だったからです。, 私がノーベル賞の賞金をマララ基金に寄付した理由が、この話にあります。女の子たちに質の高い教育の機会を与えるためにです。世界中あらゆるところ、どこにいる女の子にでもです。そして、彼女たちの声をとどろかせるためにです。まずはパキスタンに学校を設立する所から、とくに、私の故郷であるスワートとシャングラに学校を設立したいと心に決めています。, 私の地元には女の子が通える中学校がないのです。中学校設立は、私の願いであり、私の公言していることであり、私の挑戦です。学校ができれば、私の友人や姉妹がそこに通え、質の高い教育を受けることが出来ます。夢を叶える機会を手にすることができるのです。, これは私の出発点ですが、私の終着点ではありません。すべての子供たちが、すべての子供たちを学校で目にすることができるようになるまで、終わることはありません。, 親愛なる兄弟、姉妹、かつて、マーチン・ルーサー・キング牧師、やネルソン・マンデラ大統領、マザー・テレサ、アウン・サン・スーチーのような、変革をもたらしたすばらしい人々はこの舞台に立ってきました。カイラーシュ・サティヤールティーさんと私が踏み出した第一歩も、新たな変革をもたらす第一歩、永続的な変革をもたらす第一歩となることを願って止みません。, 私の大きな望みは、教育の権利についての戦いがこれで最後になることです。もうこれで終わりにしましょう。私たちはすでにできることは始めているのですから、そろそろ躍進するのです。, 世界の指導者たちに教育の重要さを語るときではありません。とっくに知っているでしょうから。指導者たちの子供たちはみないい学校へ行っているのですから。自分たちの子供だけでなく、世界中の子供たちのために行動を起こしてもらうのです。世界中の子供たちの教育のために一致団結し、最優先事項として考えてもらうのです。, 15年前、世界の指導者たちはミレニアム開発目標(MDGs)として、世界的な最終目標を掲げました。それに従い、さまざまな進歩が見られました。カイラーシュ・サティヤールティーさんがおっしゃったように、学校に行けない子供の数は半減しました。しかし、世界は初等教育にしか着目していませんし、まだまだ目が行き届いてはいないのです。, 2015年に国連で世界中の代表が次なる目標、持続可能な開発目標を掲げるために一堂に会する機会があります。そこで次世代のための世界規模での目標を掲げるでしょう。, 世界は基本教育のみの教育でよしとはしません。もうしないのです。なぜ指導者たちは発展途上国の子供の教育が、基本教育で十分とするのでしょうか。自分たちの子供たちが同時期に代数や数学、科学や生物の宿題をこなしているというのに。, 指導者たちはすべての子供たちに質の高い初等教育と中等教育の恩恵が、無償で与えられるように働きかけなくてはいけません。, 実行不可能だとか、お金がかかるだとか、難しすぎるだとか言う人もいるでしょう。もしくは、不可能だとすら。しかし、世界が考えるときが来ているのです。, 親愛なる兄弟、姉妹、いわゆる大人の世界では理解できることなのでしょうが、私たち子供にはできないことがあります。なぜ強い力を持つ国は戦争をいとも簡単に生み出すのに、平和は生み出せないのでしょうか。, いとも簡単に銃を与えるのに、本を与えられないのでしょうか。戦車はいとも簡単に作ってしまうのに、なぜ学校は建てられないのでしょうか。, 私たちは今を生きています。私たちは不可能はないということを信じています。45年前に月に到達した私たちは、火星に到達しようとしています。この21世紀に、私たちはすべての子供に質の高い教育を授ける手はずを整えられるようにならなければいけないでしょう。, 親愛なる兄弟、姉妹、子どもたち、待っているだけではなにも変わりません。働きかけるのです。政治家や世界の指導者たちだけでなく、私たちみんなが貢献するのです。あなた、私、私たちが。それが私たちに課せられた課題なのですから。, 最初で最後の世代になりましょう。空っぽの教室を目にした、最後の世代となりましょう。幼少期を奪われ、可能性を無駄にされた最後の世代に。, 少年少女工場で幼少期を過ごした最後の時代、強制的に児童婚させられた最後の時代に、子供が戦争で命を失う最後の時代に。学校の外で子どもを見る、最後の時代に。私たちで終わらせましょう。ここから共に終わらせて行きましょう。今日、ここから、ちょうど今から。今から終わらせましょう。, ログミーNewsに関する記事をまとめています。コミュニティをフォローすることで、ログミーNewsに関する新着記事が公開された際に、通知を受け取ることができます。, 若者の共感を集める「就活への不安」 採用担当者が知っておくべき、SNSで顕在化した“学生の本音”, 村上臣氏「日本型雇用だと優秀な人材に来てもらえない」 グローバルでの採用のスタンダード, 自分の死を見つめることで充実する“生の密度” コロナの時代に考えるべき、人生で本当に大切なこと, 「権限委譲は放ったらかしではない」 メンバーとリーダーが各々に果たすべき“責任”とは?, ヤフー川邊氏「Amazonを抜く気でいます」 ZOZO買収のきっかけとなった、目標に近づくための行動習慣, 「働く」を、もっと「おかね」につなげたい 人材企業ネオキャリアがFinTech事業に挑む理由, 会社説明会で学生の満足度を下げる、社員の“ある行動” 採用担当者が気づかない「企業と学生のギャップ」, 「まさに今、医療が変わる瞬間」 LINE上で予約・診察・決済が完結する「LINEドクター」 11月開始予定, 【全文】DeNA三浦大輔、引退の男泣き 「ファンの応援があったからここまでやってこれた」, 【全文】ノーベル平和賞、マララ・ユスフザイさんのスピーチ「本とペンは世界で最も強力な武器」, Malala Yousafzai Nobel Peace Prize Speech. *出典2:ユニセフ基礎講座「なぜ女子教育を推進するのか」 今月10日、2014年ノーベル平和賞にパキスタン出身の17歳のマララ・ユスフザイさんが、史上最年少で同賞を受賞した。, 彼女が住んでいたパキスタンの北西部に位置するスワート地区は、2007年に武装勢力『パキスタン・ターリバーン運動』に行政が掌握され恐怖政治が敷かれる。これにより女性に対する差別が激化し、女子学校は破壊され教育を受ける権利は奪われる事になってしまった。また同地区の女性達は、日常的に行われる暴行により命も危険に晒される事になる。マララさんは11歳の時に、ターリバーンの恐怖政治に怯える人々の惨状や体制の批判を、イギリスのBBC放送のブログへ投稿し世界へ訴えた。その甲斐もあり、パキスタン政府は同地区からターリバーンを追放する事に成功するが、その原因を作った彼女は同組織から命を狙われる事になってしまい、2012年に学校からの帰宅途中に銃撃され重傷を負ってしまう。, このターリバーンが行った15歳の少女への襲撃は世界に大きな衝撃を与え、同時に恐怖に屈しない姿勢が多くの人々の共感を呼び、特に教育の機会を奪われた女性の希望の象徴となり、多くの人に勇気を与えた。, 11歳の幼い少女だったマララさんが、命をかえりみず勇敢に恐怖に立ち向かい世界に影響を与えた功績は、我々日本人が自らの小学5年生の頃を思い出した時に、初めてその偉大さがわかるのではないだろうか?, しかしながら、私は個人的に今回のマララさんのノーベル平和賞を受賞そのものへは、必ずしも賞賛を贈れないのである。, そもそもノーベル平和賞の掲げる平和とは、明らかに欧米社会から見た平和であり、もっと言うならば旧西側諸国よりの平和である。この平和は時に欧米社会(とくにアメリカ)に政治利用され、自己の正当化や敵対勢力のけん制など、都合よく国際世論を誘導してきた側面を持っており、平和の押し売りとの見方もできるのだ。, そんな一方的な平和を押し付けて来た欧米社会が現在直面している危機は、イスラム原理主義を掲げる『イスラム国』の台頭であるだろう。, 今年に入り『イスラム国』を宣言したテロ組織は、同組織の活動拠点であるイラク・シリアで一般人の虐殺行為を続け、一方で誘拐した捕虜の斬首映像をネット上に流すなど、その残虐性は世界を震撼させている。現在アメリカは、同国にとって『イスラム国』は最も優先すべき敵であると見ている。その他にも、パレスチナの『ハマス』やアフリカで虐殺を繰り返す『ボコ・ハラム』、そしてマララさんを襲った『パキスタン・ターリバーン運動』も同じイスラム原理主義者達である。, つまり、17歳の少女が最年少でノーベル平和賞を受賞した理由は「反イスラム原理主義のプロパガンダ」でしかなく、「イスラム原理主義=悪である」というイメージ操作であった事は、誰の目からみても明らかなのである。, だが、今回の受賞でマララさんは「反イスラム原理主義の象徴」となったわけであり、これに対しイスラム過激派は「欧米に媚を売ったイスラムの裏切者」と批判した。彼女を襲った『パキスタン・ターリバーン運動』だけでなく、全てのイスラム原理主義者達から非難を浴びる事になったわけで、つまりは命を狙われる危険がより増したのである。, 現在、『イスラム国』へ対するシリア空爆はアメリカ主体で行われている。最近開かれた2014年国連総会でも、オバマ大統領は各国に「打倒イスラム国」への賛同を求めた。この時のオバマ大統領の演説には、かつてブッシュ元大統領がイラク攻撃の正当性を訴え国連を2分化した時ほどの物議を醸す事は無かったようだ。それは『イスラム国』が正式な国ではなくテロリスト集団と見なされており、シリア政府もこのテロ集団の危険性を訴え支援を要請しているからであるだろう。しかしそれでも、各国の対応はオバマ氏の演説に対し慎重であったと言える。, 何故ならば『イスラム国』のようなイスラム過激派に対し、欧米社会は「もう関わりたくない」と言うのが本音であるからだ。これは9.11以降、アメリカがイラク・アフガニスタンの治安維持に失敗し泥沼化した事や、その後EU諸国にも広がったテロにより、欧米社会全体で多大な犠牲者が出てしまったからである。, もともとアメリカが中東にこだわっていたのは、石油利権を守る為であったことは、同国が最大の石油輸入国であった事を見れば明らかである。しかし近年アメリカは、シェールガスという石油に取って代わるエネルギーを自国内で生産する事に成功した。これはエネルギー革命であり、今やアメリカにとって中東の石油に価値などなく、つまりは中東問題など興味がないのだ。, オバマ大統領はシェールガスが実用化されだした2013年に、「アメリカは世界の警察官ではない」と述べ、 同国の歴代政権が担ってきた世界の安全保障に責任を負う役割は担わない考えを明確に示している。, 日本ではなじまない話だが、アメリカもヨーロッパ諸国も自国内にイスラム教徒の人口の割合はそれなりに占めており、その大抵は社会的に差別をされている貧困層でもある。現在、アメリカは比較的好景気とされているが、実際は失業率は高く収入格差の開きも大きい。EU圏などは全体的にみても不景気であり、ただでさえ貧困層に置かれている各国のイスラム教徒にとっては苦しい状況にあると言える。, そんな中で、今もっとも景気が良いのが『イスラム国』(イスラム国は国家ではないが)であるだろう。, 『イスラム国』が今までのアルカイダやタリバンなどのテロ組織と一線を画しているのは、兵士を高い賃金で求人している事である。ここの兵士になれば、日当は日本円で3万円以上とされており、月給にすると50万以上になり、これは日本人の平均給料よりも遥かに高い計算になる。このような話につられ、各国から貧困にあえぐイスラム教徒や、果ては元々イスラム教徒ではない失業中の若者までもが、テロ組織へ合流するという前代未聞の現象が起こっているのである。, このテロ組織へ自国民が流出するという問題点は、勝手に国外へ出ていき中東で活動するだけなら大して問題にはならない。だが当然『イスラム国」の好景気はいつまでも続くはずがなく、その景気が傾いた時に、逆に兵士達が自国へ戻って来る事が問題になるのだ。そうした場合、テロリストを自らの国内に容易に受け入れる事になってしまい、今度は「自国がテロの標的になる」という新たな恐怖が生まれるわけである。, 「自国からテロ組織へ流出=国内にテロの脅威」という図式になる事から、欧米諸国は『イスラム国』への就職をどうしても止めたいわけであり、止める方法はその組織を叩くしかないのである。, オバマ大統領は、アメリカ軍の世界の警察の役割を放棄する宣言をしたが、簡単には行かない。, 『イスラム国』の活動拠点であるイラクは、かつてサダム・フセインによって統治されており、同政権は評価が分かれるものの、存命時には国内の治安は維持されていた事は間違いない。それを2003年にアメリカが同国へ強引に侵攻し、僅かな期間で壊滅に追い込んだ。だが、その後の戦後統治は完全に失敗し、イラクの治安はみるみる悪化して行く事になる。同時に新たなテロ組織が生まれる結果となり、『イスラム国』の前身であるテロ組織も、この時期からイラクで活動を始めている。止まないテロにアメリカ兵の犠牲は尽きることがなく、遂にアメリカは2011年に自らが崩壊させたイラクへの責任を放棄し、治安回復の道筋が見出せないまま逃げるように完全撤退する。(因みに、この時期には国内でシェールガスの実用性のめどは、既についていたと見られる), アメリカ軍が撤退した後のイラクでは、『イスラム国』の前身である『ISIS』が勢力を拡大し猛威を振う結果となった。勢力を拡大した『ISIS』は今年に入り、『イスラム国』を宣言したというわけである。, つまり、現在の『イスラム国』を作ったのはアメリカという事になる。(アメリカは過去にアルカイダも作っている), そもそもの原因を作ったアメリカがこの問題から責任逃れすれば、今まで築いた国際的地位は下落し、世界に対して影響力を失う事は避けられないだろう。従って、アメリカ政府としては否が応でも『イスラム国』を叩くしか道はないのである。, 国内世論は『イスラム国』のようなイスラム過激派へ、これ以上関わる事にうんざりしている層が多くを占めており、もっと言えば戦争行為にうんざりしている。, そして、現在のアメリカが抱えるもう一つの難問として、イスラエルとの関係があるだろう。, 今年に入り、イスラエルはパレスチナのガザ地区へ空爆を繰り返し、一般市民を虐殺している。国内で強力な力を持つユダヤ人への配慮から、イスラエルとは友好関係を築くのがアメリカの伝統である。現在イスラエルが行っているガザ地区への虐殺行為は、国内外問わず批判されている。しかしながら、アメリカ政府としてはイスラエルを支持せざるを得ないのが現状であるわけだ。, こうも国民の反発を招く政策を立て続けに打ち出せば、もはや政権へのダメージは壊滅的なものになり、選挙へ与える影響は図りしえないものになってしまう。アメリカ政府は「イスラム国への攻撃」と「イスラエルのガザ地区への攻撃の支持」、この2つの事象に国民が納得するシナリオを作る事が教務になったわけである。, シナリオには登場人物が必要で、それは劇的で衝撃的な人物が適任であり、さらに正義と悪が国民に分かり易い勧善懲悪的なストーリーである方が好ましかった。, この少女は11歳で恐怖政治と戦い、15歳で命を狙われるという劇的な人生を歩んで来た。そして、同じ敵を持つという共通点があった。『イスラム国』・イスラエルが攻撃している『ハマス』は、少女を襲った『パキスタン・ターリバーン運動』と同じイスラム原理主義を掲げる過激派組織であったわけだ。, 17歳の少女に、前代未聞の最年少でノーベル平和賞を受賞させれば、インパクトは大いにあり感動を巻き起こすだろう。また、彼女の辿った壮絶な過去と未だ残る痛々しい傷跡を見れば、世界は彼女に同情し「イスラム原理主義は悪である」と共感するに違いない。これでアメリカ政府は自らを正当化する、お膳立てができるのである。, 前の方で述べたが、今回の受賞で一番の問題は「17歳の少女の命が危険にさらされた」事である。政権維持や利権を守る大人達の勝手な都合の為に、子供の命が利用されてしまったのだ。, 現に、イスラム過激派勢力はマララさんに対し「イスラムの裏切者」とし敵対心をあらわにした。彼女の命を狙う勢力は、今やパキスタンだけでなくイスラム社会全体へと広がり、危険性は格段に増したと言える。だが、たとえ彼女が命を落としても、大人達はそれを新たな政治利用の為の道具とするだろう。彼女を政治利用した者達にとって、所詮は彼女の命などその程度の物でしかないのである。, 私は17歳の少女の顔に残る痛々しい傷跡を見ると、彼女の倍以上を生きている大人として、恥ずかしい気持ちになってしまう。, しかしながら、マララさんは11歳の頃より自らの命をかえりみず、理不尽と戦ってきた女性である。彼女は、たとえ自分が受賞した裏に様々な政治的要素があったとしても、結果として世界平和に貢献できるのであれば、喜んで命をささげるかもしれない。, そんな彼女の生き方を前に、私の考えなどは、ただの下種の勘繰りにしか過ぎないのだろう。, Yourightさんは、はてなブログを使っています。あなたもはてなブログをはじめてみませんか?, Powered by Hatena Blog
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