『父親たちの星条旗』は、同名の原作を映像化したものである。原作者はジェイムズ・ブラッドリーの息子。そしてこの著作は、著者である息子の視点から、父の世代の戦争の実相を究明していくドキュメンタリーであった。 映画「父親たちの星条旗」日本版劇場予告. Copyright© 2013 Nobuaki Miura. 父親たちの星条旗【Blu-ray】 [ ライアン・フィリップ ] 価格:1500円(税込、送料無料) (2018/4/30時点) 史劇 , 実話ベース , 戦争 あらすじ: キャンペーンに参加した3人のうちのひとり、今では葬儀屋を営む年老いたジョン・“ドク”・ブラッドリーが突然倒れ病床で「あいつは何処だ! 彼が語り始めたのは硫黄島の星条旗の写真に関することでした。 1945年2月 海兵隊の「ドク」ジョン・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)はキャンプで登山や上陸訓練を受けた後、1万2千の日本兵が守備している硫黄島に配属される事になりました。 父親たちの星条旗の映画レビュー・感想・評価一覧。映画レビュー全32件。評価3.3。みんなの映画を見た感想・評価を投稿。 著書:『一目でわかる学校系列と教育業地図』『一目でわかる商品・ブランド地図』(日本実業出版社)、『東西学』(経営書院)、『大阪的基準』(東洋経済新報社)など。. 世界史・日本史の隠れた巨人たちを鮮やかに蘇らせる!歴史小説家 三浦伸昭公式ホームページ, 制作;  アメリカ 制作年度;2006年 監督;  クリント・イーストウッド   (1)あらすじ  1945年2~3月の硫黄島の戦いは、太平洋戦争で最大の激戦となった。そして、6名の海兵隊員がこの島の戦略拠点・摺鉢山の山頂に星条旗を立てる1枚の写真は、第二次世界大戦で最も有名なものとなった。  第7次戦時国債の不人気に頭を悩ますアメリカ財務省は、この1枚の写真を利用して国民の愛国心を喚起しようと考え、写真に写っていた6名の海兵隊員を母国に召還する。しかし、摺鉢山占領後の激闘で既に3名が戦死していたので、生き残った3名であるジェイムズ・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)とアイラ・ヘイズ(アダム・ビーチ)、そしてレイニー・ギャグノン(ジェシー・ブラッドフォード)が、国債募集の全国行脚に狩り出されることになった。  ところが、有名な写真に写る星条旗は、実は、激戦の最中に立てられたものではなかった。最初に立てられた旗が降ろされた後に、安全な状況の中で立てられた代用品に過ぎなかったのだ。また、政府が認定した3名の戦死者の中に人違いがあった。  生き残った3人は、こういった事実を糾そうとするのだが、政府のポピュリズム的な国策によって情報は大きく歪められてしまう。そして、彼らは国民によって「英雄」と呼ばれるようになった。3人は、戦争後遺症と周囲の異常な環境によって人生を狂わされてしまう。  歳月は流れ、老いたブラッドリーは臨終の床で息子に語る。「戦争には、本当の英雄など存在しない」のだと。  (2)解説  クリント・イーストウッド監督の「硫黄島2部作」の巻頭を飾る巨編である。この2部作は、それぞれアメリカ側と日本側の双方の視点から一つの戦場を撮るという点で画期的なのだが、2作とも異なる文芸的テーマを持っている点でも特色がある。  『父親たちの星条旗』は、同名の原作を映像化したものである。原作者はジェイムズ・ブラッドリーの息子。そしてこの著作は、著者である息子の視点から、父の世代の戦争の実相を究明していくドキュメンタリーであった。そこに見られるのは、息子から父の世代へと捧げられる感謝と尊敬の念である。そのため、この著作は世界中の誰もが共感できる普遍性を持っていた。  イーストウッド監督による映像化は、著作の物語を忠実になぞっている。スピルバーグ(製作)らが長年の労苦の末に培った硬質な戦場風景や音響効果も、息を呑むほどに素晴らしい。しかしながら、「映画」が持つ固有の限界(時間枠など)に大きく左右されているため、原作を大幅に矮小化する内容になってしまったことは否めない。  イーストウッド監督は、「親子二世代のドラマ」より、むしろ「アメリカ政府の冷厳な政治哲学と、個々の平凡な兵士の生々しい運命とを対比すること」を映画の主題にしている。これは、単純なアメリカ政府批判ではなくて、「政治」そのものへの批判である。そして、これはもちろん「戦争批判」にも繋がるのだ。その意味では、とても真面目で良質な映画だと感じた。  しかし、原作本の最大のテーマである「世代間の相克」や「子の視点からの親の世代に対する尊敬」が、映像の中でほとんど出て来ない。私は、原作を読んでこういった点に非常に深く感動した人なので、映画を観て物足りなく感じた。中途半端に描くくらいだったら「老いたブラッドリーと息子の物語」を映画から排除して、1945年前後のストーリーに特化すれば良かったのに。  また、この映画は過去と未来を次々に切り替える手法で物語を語るのだが、説明が足りないために、画面で今何が語られているのか分かりづらい時がある。映画は、基本的に3つの時間軸から構成されている。すなわち、硫黄島の戦場(1945年2~3月)、銃後の国債公募ツアー(1945年4月ごろ)、老いたブラッドリーとその息子(1990年代)の3つである。これらが順不同で次々に切り替わるので、物語を理解するのがたいへんである。私は事前に原作を読んでいたので大丈夫だったのだが、そうじゃない人は 、いきなり冒頭から何が何だか分からなくなったのではないだろうか?  スター俳優を排除したリアリズムが、個々の登場人物の印象を薄くしたのも問題であった。主役の3人はともかく、残りの兵士については顔の区別がつかず、誰が誰やら最後まで把握出来なかった観客が多かったのではないだろうか? 実を言うと、そういう私も、2回目の観賞でようやく個々の人物が区別できるようになったのである(笑)。  「残りの兵士」の中で、最も重要な原作上の人物は、チェコ移民のマイク・ストランク曹長である。彼は、兵士たちの精神的支柱となった尊敬に値する人物であり、本物の「英雄」だったのだが、硫黄島の戦いの最終段階で戦死してしまう。生き残った3名は、本当の英雄がマイクであることを知っていて、彼を失った悲しみを忘れ難いからこそ、アメリカ政府の冷酷さとご都合主義に苛立つのである。映画では、インディアン出身の激情家アイラを前面に出して、こういった状況をエモーショナルに語っているのではあるが、肝心のマイクに関する描写が少ないために、マイクそのものの魅力がまったく伝わって来ない。マイクを演じたバリー・ ペッパーもミス・キャストだったと思う。そういうわけで、原作を未読の人は、アイラたちの激情やストレスの理由がピンと来なかったのではないだろうか?  このように、『父親たちの星条旗』は全体として舌足らずで中途半端なところが多い。わずか2時間台の映画の中で、あの雄大な原作の全てを描こうとしたことに問題があったのだろう。  もっとも、原作自体が、イーストウッド監督の持ち味が十分に出せるようなストーリーでは無かったように思われる。自分の殻を壊して新しいことに挑戦し続けるイーストウッドの闘志は、尊敬に値する。しかしこういった冒険は、しばしば失敗も生むのである(私は、たとえば 『スペース・カウボウイ』は失敗作だったと感じている)。  むしろ『硫黄島からの手紙』の方が、日本人キャストによる日本側の物語でありながら、はるかに「イーストウッドの持ち味」が出ていたのが興味深い。. /. All rights reserved. これは実話に基づいてその顛末を描いた映画です。 硫黄島に上陸した米軍は、壮絶な戦闘が続くなか、摺鉢山の頂上に星条旗を立てます。上陸地点を見下ろすその位置に掲げられた星条旗は、米軍兵士たちを鼓舞し士気を高めました。 「写真家は略奪もすれば保存もする。また告発もすれば神聖化もする」と言ったのは、スーザン・ソンタグでした。太平洋戦争時、硫黄島で撮られた一枚の写真が、硫黄島の死闘を「神聖化」し、海兵隊の3人の兵士たちを「英雄」にします。これは実話に基づいてその顛末を描いた映画です。 硫黄島に上陸した米軍は、壮絶な戦闘が続くなか、摺鉢山の頂上に星条旗を立てます。上陸地点を見下ろすその位置に掲げられた星条旗は、米軍兵士たちを鼓舞し士気を高めました。それを見た海軍長官は、記念にあの旗が欲しい、と言い出します。伝令係のレイニー・ギャグノン(ジェシー・ブラッドフォード)が代わりに掲げる旗を持って頂上に赴きます。電話線を引くために作業していた海兵隊兵士アイラ・ヘイズ(アダム・ビーチ)ら4人に衛生兵ドク・ブラッドリー(ライアン・フィリップ)、旗を持って行ったレイニーの6人が星条旗を再び摺鉢山に掲げます。その瞬間を撮った写真が全米のメディアを賑わし、厭戦気分に冒されつつあった国民にも希望を与えたのです。6人のうち生き残ったレイニー、アイラ、ドクの3人は米国本土に戻されて「英雄」に祭り上げられ、戦時国債キャンペーンに駆り出されます……。 この作品に描き出される若者3人は、戦争に翻弄され、政治に翻弄され、メディアに翻弄されます。もっと端的にいえば「国家」に翻弄される脆弱な「国民」の姿を示します。それはマックス・ウェーバーの「国家とは、ある一定の領域の内部で、正当な物理的暴力行使の独占を要求する人間共同体である」という警句そのままです。か弱き国民は、国家同士の暴力の応酬、すなわち「戦争」に巻き込まれ、生還してなお国家のソフトな暴力の行使としての「陰謀」に加担させられる。私たちは、さしあたって嘆息とともに呟くしかありません。国家の前では、国民とは一つの駒にしか過ぎないのか、と。しかし、勝ち戦もまた癒されることのないトラウマや傷を若者たちに刻みつけるのだというメッセージは、必ずしも私たちに絶望感のみを与えるわけではないでしょう。 戦闘シーンが、凄まじい。米兵が銃弾に倒れ、倒れた兵士の亡骸が波打ち際に漂う様は、戦争の非情を伝えます。日本兵は、明瞭な姿を伴って米兵の前に現れることはなく、ただただ目に見えぬ敵として「恐怖」の存在として表現されます。 また、英雄に祭り上げられた三者三様の処世が丹念に描き分けられているのも要注目です。とりわけネイティブ・アメリカンのアイラへの差別的なエピソードを随所に配している点が本作を重層的なものにしています。 ドク・ブラッドリーが年老いて、病に倒れるシーンが冒頭におかれ、その息子が関係者に話を聞いていく、というフレームで話は進んでいくのですが、フラッシュバックによって時制が行きつ戻りつする手の込んだ構成が、本作を一層彫りの深いものにしていると思います。登場人物たちの苦難や葛藤が、時を超えて、生涯をとおして抱え込まれていたものであることを強く訴えかけてくるのです。 ラストシーンでは、摺鉢山にはためく星条旗が映し出されます。それは、幾多のシーンを見せられたあとでは、米国の栄光と誇りの象徴という単純な意味には収束できないものでしょう。その旗は、米国の、いや、国家というものが宿命的に背負わねばならない暴力性や老獪さをも同時に表象するものではないでしょうか。米国の資本で作られた映画において、かくも多義的な意味内容が込められて映し出された星条旗は、かつてなかったと思います。, 本作は、日本の立場から撮られる『硫黄島からの手紙』とワンセットになっています。日米双方の視点から硫黄島の戦闘を描いたという「公平」ぶりが映画ファンのあいだで話題になりましたが、そのような「公平」が映画にとってさして重要とも思えません。私はこの一本だけでも充分完結した優れた作品であると考えています。いずれにせよ、この時代にこのような作品を世に送り出したクリント・イーストウッドは正真正銘の映画作家といえましょう。, *『父親たちの星条旗』監督:クリント・イーストウッド出演:ライアン・フィリップ、ジェシー・ブラッドフォード映画公開:2006年10月(日本公開:2006年10月)DVD販売元:ワーナー・ホーム・ビデオ, ZAQブログ『コラムニスト宣言』に発表した映画レビュー記事がベース。ZAQ-BLOGariのサービス停止に伴い、記事に加筆修正をほどこしたうえでこちらに移行しました。DVD化されている作品に関するテキストを収録しています。封切り作品に関するレビューも随時加えていきます。, コラムニスト、ライター。大阪府岸和田市在住。時事問題全般、メディア論、書籍、映画・アートetc.

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